ナースにも介護技術が必要

現在、日本では少子高齢化が進み、在宅医療のニーズが高まっています。国としても医療費を抑え、医療保険制度を維持するためにも在宅医療を推進し、患者自身も病院よりも住み慣れた自宅での療養を希望しています。そのため、看護師以外の一般の方が寝たきりのお年寄りを自宅でケアすることも珍しくなくなっています。

在宅で患者を看病するには通院と併用したり、訪問看護を利用することがよく行われていますが、患者の家族としても看護の知識や技術を身につけておくことが大切です。ヘルパーと違い、患者の家族には医師の指導の下で痰の吸引など看護師と同じ行為を行うことが許されていますし、患者の急変などとっさの場合にその場で対応できれば安心ですし、医者へ行くかどうかの判断をするにも看護の知識は必要になるのです。

家庭で家族が患者を看護するには様々な技術が必要となります。薬の飲ませ方なども身につけておく必要がありますが、特に食事や移動といった日常生活の援助は必須項目です。こういった日常生活の看護はどんな看護技術書にも載っている基本的技術でもあるので新人の看護師にも参考になると思います。朝起きてから寝るまでの間に行う日常生活の看護は多くありますが、ここではどんな家庭看護の場合にも必要となる基本的な看護技術について簡単に紹介します。

<食事の援助技術>
食事の経口摂取が困難な患者でなければ基本的に患者は自力または介助を受けて食事をします。人間にとって食事は単に栄養を摂るだけでなく、家族とのコミュニケーションなど社会的な意味合いを持った行為なので大切にしなければなりません。患者を看護する家族にとっても患者が食事をする様子を観察することで患者の状態を知ることができます。家族は患者の状況に合わせてできるだけ自力で食事ができるような援助をするとともに、病床であっても食事が楽しくなるような工夫をする必要があります。

<排泄の援助技術>
たとえ寝たきりの高齢者であっても下の世話を他人にはしてもらいたくないと思うものです。排泄の援助には常に患者の羞恥心の問題がつきまといます。患者が可能な限りは自分で用が足せるようにしてあげてください。排泄の失敗は患者にとって大きなショックとなるものなので、家族が手伝うにしてもベッドが汚れたりしないように注意が必要です。患者の排泄の周期を知り、前もって誘導できるようにしておくことも有効です。また、排泄物の状態から患者の体調を判断できる技術も求められます。

<移動の援助技術>
着替えのためにベッドの上で患者を移動させるだけでも適切な方法を取らなければ看護者の肉体的な負担は増大します。患者をベッドから車椅子などに移動させる際も動かし方のコツをつかんでいれば腰への負担を軽減でき、患者も安心できます。自力では動けないとしても患者自らが動こうとする意志があればお互いに協力して楽に動くことができるものです。逆に患者を不用意に動かしたり不自然な格好で動かせば骨折させてしまう危険性もあります。人間の自然な動きに合わせて重心を意識し、力を効率よく使うことが理想の方法です。